【矢田修】ドジャース山本投手を支える名トレーナー その経歴と独自理論について

矢田修
スポニチより転載

MLBの舞台で活躍を続けるロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手。
その圧倒的なスタミナと投球の安定感の裏には、ある日本人トレーナーの存在があります。
その人物こそ、矢田修(やだおさむ)先生です。
彼は単なるフィジカルトレーナーではなく、身体の本質に迫る治療家であり、長年にわたり多くのトップアスリートを支えてきた名匠です。
山本投手の肉体改造の裏側には、矢田先生独自の「BCトータルバランスシステム」に基づく理論が息づいており、その理論は日本のスポーツ医療の常識を覆すものでした。

彼が掲げるのは“正しい身体の使い方を取り戻す”という理念で、筋力やスピードだけに頼らない自然な身体操作を徹底的に追求しています。
山本投手が長いシーズンを通しても衰えない投球リズムや驚異的な回復力を見せるのは、まさにこの哲学の賜物です。
さらに矢田先生は、心と身体のバランスを整えることにも重点を置き、アスリートが自分の身体と向き合う力を育てています。

ここでは、そんな矢田修先生の知られざる経歴や、長年の経験から生まれた独自メソッド、そしてドジャース・山本由伸投手との信頼と尊敬に満ちた絆を、より深く掘り下げてご紹介します。

CONTENTS

ドジャースでも異彩を放つ日本人トレーナー

矢田氏と山本投手
朝日新聞より転載

2024年、山本由伸投手のロサンゼルス・ドジャース移籍に合わせ、矢田修先生も球団の正式スタッフとして渡米しました。
これは、メジャーリーグで日本人治療家が公式トレーナーとして採用された極めて珍しい例であり、現地でも大きな話題を呼びました。
ドジャース球団内では、選手一人ひとりに専属のサポート体制が敷かれていますが、矢田先生の存在はその中でも特別な位置づけにあります。
ドジャースの編成部門幹部ガレン・カー氏は

「彼の理論は我々の理解していたトレーニングとは全く違う。だが結果がすべてを証明している」

とコメントし、チーム内でもその革新性を認めています。

メジャーリーグでは、データ解析やAIを用いた身体データの科学的管理が主流ですが、矢田先生のアプローチはその真逆ともいえる“自然との調和”を重視したものです。
彼は選手たちの体内リズムを月の満ち欠けや地球の周期と合わせることで、身体の調整を図ります。
特に「太陰鼓動」「太陽鼓動」と呼ばれる呼吸法は、心拍と自律神経を安定させ、心身をひとつに結びつける重要な要素となっています。
この呼吸法によって、選手たちは長いシーズンの中でも疲労を最小限に抑え、集中力を保ち続けることができるのです。

さらに矢田先生は、選手たちの精神的なバランスにも深く関与しています。
メジャーの厳しい競争環境では、データや結果に追われて心をすり減らす選手が多い中、彼は

「心の安定こそがパフォーマンスの根源」

と説き、選手たちに“感じる力”を取り戻させています。
山本投手も

「矢田先生と話すと、自分の身体の声が聞こえるようになる」

と語るほど、彼の影響は深いものです。

また、彼の存在はチームの文化にも少しずつ変化をもたらしています。
MLBでは「結果重視」「データ主義」が根強く浸透していますが、矢田先生は

「人間の身体は自然の一部であり、数字では計れない感覚がある」

と繰り返し伝えています。
その考え方が、山本投手をはじめ若手選手やスタッフの間で共感を呼び、徐々にチーム全体へと広がりつつあります。
矢田先生の理論は、単なるトレーニング法ではなく、人間の根源的な感性を呼び覚ます“新しいMLBの在り方”を提示しているのです。

矢田修の経歴と歩み

矢田接骨院
本人インスタグラムより転載

矢田修先生は1959年に香川県で生まれ、若くして治療家の道を歩み始めました。
幼少期から自然や身体の動きに強い関心を持ち、学生時代には柔道整復や東洋医学にも触れるなど、早くから「人の身体を治す」という使命感を育てていきました。

1980年に大阪市東成区で「矢田接骨院」を開業し、以来40年以上にわたり、一般の患者からプロアスリートまで幅広い層の身体改善に携わっています。
開業当初から、単なる「痛みの除去」ではなく、「身体の機能を最大限に発揮させる」ことを目的とした施術を行っており、その理念は今も変わっていません。

さらに1988年には、身体の可能性を科学的かつ感覚的に追求する教育・研究機関「キネティックフォーラム」を設立。
全国各地から治療家やトレーナーが学びに訪れ、彼のもとで研鑽を積んでいます。
ここでは、筋肉や骨格のバランスだけでなく、呼吸・自律神経・感覚統合といった多角的な視点からアスリートの身体を整える理論が体系化され、日本のスポーツ医療に革新をもたらしました。

また、社会的貢献にも力を注ぎ、NPO法人スポーツ健康援護会を立ち上げ、地域の子どもたちやジュニアアスリートに対する無料の身体相談や講習会を定期的に開催しています。
矢田先生の活動は、単なる治療家としての枠を超え、“人の可能性を広げる教育者”としての側面を強く持っています。

彼の肩書には、「キネティックフォーラム代表」「矢田接骨院院長」「Ip Selectアドバイザー」などがありますが、どれも根底には“人間の身体を正しく使う”という哲学が流れています。
その思想は、身体を鍛えるのではなく、身体と対話し、自然と調和させるという深い洞察に基づいており、まさに現代のスポーツ界に必要とされる新しい治療と指導の形を示しています。

山本由伸投手との出会いと運命の一言

山本由伸
インスタグラムより転載

山本由伸投手と矢田修先生が出会ったのは2017年。
当時、まだオリックス・バファローズに入団したばかりで、将来の方向性に迷いを抱えていた山本投手が、岡山県備前市でグラブショップを営む鈴木一平さんの紹介で矢田先生のもとを訪ねたのがすべての始まりでした。
矢田先生は、山本投手の動きをわずか数分見ただけで、その身体の使い方の癖やエネルギーの流れの滞りを即座に見抜いたといわれています。

初対面で矢田先生は、当時まだ20歳前後の山本投手にこう伝えたそうです。

「今の投げ方の延長線上では、あなたの理想とする投手像にはたどり着けない。フルモデルチェンジが必要です。」

この一言は、若い山本投手にとって衝撃的でした。
しかし、彼はその場で迷わず「じゃあ、そうします」と即答したのです。
この素直で大胆な決断こそが、後にMLBをも魅了する“山本由伸”を形づくる最初の一歩となりました。
矢田先生は当時を振り返り、

「彼の中にある純粋な探究心と覚悟を感じた」

と語っています。

当時の山本投手は、わずか5イニングを投げるだけで全身に強い張りが残り、10日間ほどの休養が必要なほど身体に無理がかかっていました。
トレーニングでは筋力をつけても結果が伴わず、肩や肘の違和感に悩まされていた時期でもあります。
矢田先生はまず、フォームではなく「呼吸と姿勢」「体幹の連動性」を見直すことから指導を開始しました。
そこに筋肉の力任せではない、効率的でしなやかな動きの再構築が加わり、徐々に山本投手の身体は理想の形へと変化していきました。

数年後、彼は完投しても翌々日にはブルペンに立てるほどの回復力を手に入れ、体の軸がブレない安定感を獲得しました。
矢田メソッドによって生まれ変わった山本投手は、まるで“自然の一部のように”投げると言われるほどの滑らかさを身につけたのです。
山本投手自身も

「投手としての僕をつくってくれたのは矢田先生」

と公言し、信頼関係は今もなお続いています。

独自理論「BCトータルバランスシステム」とは

矢田修
本人インスタグラムより転載

矢田修先生が30年以上かけて確立したのが「BCトータルバランスシステム」です。
これは「Bio(生命・生体力学)」「Cell(細胞)」の略で、細胞レベルから人間本来の力を引き出すメソッドであり、身体の内部から外部までを包括的に整える理論です。
単なる施術ではなく、身体の情報を“読み解く”ところから始まるこの手法は、選手の姿勢、筋肉の連動、さらには心の状態までも観察対象にしています。
施術と運動を組み合わせた三位一体のシステムで構成され、そのすべてが有機的に連動している点が最大の特徴です。

  • BCアナライズ:専用センサーで身体の状態を多角的に解析し、左右差や歪みを数値化。データだけでなく、動作時の呼吸のリズムや筋肉の反応も細かくチェックし、日々の変化を追跡します。
  • BCバランス療法:手技によって関節や筋膜を整え、動きの質を高めると同時に、神経伝達の流れをスムーズにします。これにより、力の伝達効率が飛躍的に向上し、パフォーマンスだけでなく怪我の予防にもつながります。
  • BCエクササイズ:400種類以上の運動メニューを通じて、自然な身体の使い方を身につける。運動は単なる鍛錬ではなく、呼吸、姿勢、重心、意識の方向までを一体化させる“動的瞑想”のような側面も持ちます。

この理論の根底にあるのは、「正しく立つ」「正しく歩く」「正しく呼吸する」という人間の原点に立ち返る基本動作の徹底です。
矢田先生はこれらを“生命のリズム”と呼び、月の満ち欠けや地球の自転といった自然の周期と身体のバイオリズムを重ね合わせることで、最も効率的で安定した動作を導き出しています。
筋トレやウエイトトレーニングに頼らず、呼吸法や姿勢調整を軸に体内エネルギーを最大化するという哲学は、従来のスポーツトレーニングとは一線を画しています。
まさに“身体を科学し、心を整える”メソッドとして、国内外のアスリートからも高い注目を集めているのです。

矢田修の哲学と今後の展望

矢田修
本人インスタグラムより転載

矢田修先生の哲学は、一言でいえば「自己理解と自然との調和」です。
筋肉を鍛えるよりも、まず“自分の身体を知る”ことを重視します。
そして、その身体が自然界のリズムとどう連動しているかを意識することが、最高のパフォーマンスにつながるという考え方です。
彼にとってトレーニングとは単なる筋肉強化の手段ではなく、身体と心、そして自然との対話の時間なのです。
人間が持つ本来の生命エネルギーを再び目覚めさせることで、選手は無理のない動きと持続的な集中を手に入れられると矢田先生は説いています。

また、彼は

「自然を感じることこそが最も高度な自己管理法」

とも語っています。
太陽の光、風の流れ、季節の変化、月の満ち欠けといった自然の要素を日々の呼吸法やエクササイズに取り入れ、アスリート自身が“自然と一体になる感覚”を育むよう指導しているのです。
この感覚が研ぎ澄まされることで、選手は試合中でも無駄な力みが消え、流れるような動作を実現できるようになります。

山本由伸投手との関係は、師弟を超えてまるで“家族”のようだといわれています。
矢田先生は山本投手を

「よくできた孫のような存在」

と語り、年齢差を超えた絆で結ばれています。
互いの信頼は技術指導を超え、人生観の共有にまで及んでいます。
山本投手は試合前のルーティンにも矢田先生の呼吸法を取り入れ、心身をリセットしてからマウンドに上がるといわれています。
その信頼関係があるからこそ、山本投手はドジャースという異国の舞台でも堂々と戦い続けることができるのです。

今後は、矢田先生の理論がさらに多くのMLB選手、そしてアメリカのトレーニング界にも浸透していくことが期待されています。
日本の柔道整復の知恵と、西洋のスポーツサイエンスを融合した矢田式メソッドは、肉体的パフォーマンスの向上にとどまらず、メンタル面の回復力や集中力強化にも寄与しています。
彼の思想は、「技術の進化」と「人間らしさの回復」という相反する要素を見事に両立させるものであり、世界のアスリートたちに新たな可能性を示すものとなるでしょう。

まとめ

ロサンゼルス・ドジャースで山本由伸投手を支える矢田修先生。
その存在は、単なるトレーナーではなく、アスリートの“身体と心”の両面を整える導師のような存在です。
彼の指導は、筋力向上や技術修正といった表面的なアプローチにとどまらず、人間が本来持つ自然のリズムと生命エネルギーを再び呼び覚ますことを目的としています。
長年の経験と深い洞察から生まれた独自の「BCトータルバランスシステム」は、科学だけでは説明しきれない人間の本質的な力を引き出す画期的なメソッドとして、今や世界中のトレーニング関係者から注目を集めています。

このシステムの真髄は“調和”にあります。
身体・精神・自然の三位一体を整えることで、選手の潜在能力を最大限に引き出すという理念は、まさにスポーツ界における哲学的革命とも言えるでしょう。
山本由伸投手がメジャーの長いシーズンを通じても安定したパフォーマンスを維持できるのは、こうした深い身体理解と自然律動の融合によるものです。

また、矢田先生は日本の伝統的な身体観を現代スポーツに融合させた先駆者でもあります。
彼の考え方は「強さとは、しなやかさの中にある」というもの。
無理なく、自然に、そして意識的に身体を使うことでこそ、本当の力が発揮されると説きます。
彼の教えを受けたアスリートたちは、競技成績だけでなく、人間としての成熟や心の安定をも手にしているのです。

これからも矢田修先生は、日本とアメリカの架け橋として、そして世界のアスリートの未来を照らす存在として、多くの挑戦者たちに深い影響を与え続けることでしょう。
その教えは、時代を超えて“人が自然と共に生きる力”を思い出させる指針となり、スポーツの枠を越えて広がっていくに違いありません。

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